「パラサイト 半地下の家族」との思い出
米アカデミー賞の受賞式が明日に迫っています。
今回、作品賞の有力候補として「パラサイト 半地下の家族」に非常に注目が集まっています。
僕の周りでも、「あれ観た?」と聞かれれば当たり前のようにみなパラサイトの話になるくらいその抜群の評判が浸透しています。
僕も何週間か前に観に行ったんですが、観た後しばらくは映画の事が頭にこびりついて離れず、パラサイトにパラサイトされてる状態でした。
シンプルにメチャクチャ面白いし、色々考えたくなるし人と話したくなる映画です。
映画のキャッチコピーが「幸せ少しいただきます」なんですが、観た後に凄く良くできたコピーだと感嘆しました。
半地下のキム家にしても、金持ちのパク家を不幸にしたいなんて誰も思って無くて、ただ自分達が幸せになって良い暮らしをしたいというだけなんですが、その思いが実は誰かの幸せを奪っていて…というのが悲劇の結末を生みます。
がっちりした構造がベースにある映画で、上下や貧富という軸や家族の中の役割や気質に従って登場人物がチェスの駒のように動いていくという、ある種すごくロジカルに作られた映画だという印象ですし、その中でエンターテイメントとして飽きさせない仕掛けが随所にあるのが非常に秀逸な所です。
素晴らしく見所に溢れた映画ですが僕が、劇中で一番虜にされたのはキム家の妹ギジョンの魅力でした。
(映画が終わってすぐしたことは、その女優の名前を調べることでした。パク・ソダムさんって言うんですね…)
すごい美人という訳でも無いんですが、映画の中でギジョンは目を離せない妖艶さを放っていました。
特にパク家での黒ジャケットの格好が凄く好きで、「安物なんだろうけど本当に優秀で違いの分かる人は華美に走らずこういうシンプルな物を着るんだろうな…」と奥様に深読みさせたんじゃないかと想像してしまうほど凛として素敵でした。
またそれでいて、ギジョンは家族の中の誰よりも家族想いです。
パク家の留守中にキム家が豪邸でくつろぐ中、父や母が追い出した家政婦の身を案じたところを「私たちは私たちの事だけ考えていようよ」という言葉を発しています。
思えばキム家の侵入は兄とギジョンまででどう考えても十分だった気がしますが、そこから運転手の追放などを画策し父母を招き入れようとしたのはギジョンでした。
自分の将来に絶望しているように見える一方で、誰よりも家族の幸せを願っているという両面がギジョンというキャラクターの深みを作っている気がします。
キム家の中でギジョンだけが最終的に非業の死を遂げてしまいますが、誰よりも幸せになろうと願うことで結局地下の家政婦夫婦を不幸にして、それが自分に返ってくる…という悲しいカルマに翻弄された彼女が実はこの作品の陰の主人公ではないかと思えない気もしません。