朝乃山との思い出
コロナで日本中が大混乱ですが、相撲界には一縷の明るい光が…
「朝乃山、大関昇進!」
弱小ながら学生力士の端くれだった僕は、彼が大学生だった頃からその存在を知っていたこともあり感慨深いものがあります。
学生相撲でも188センチ160キロの堂々たる体格は一際目を引き、体つきも筋肉質で無駄に肉がついた感じもなく照ノ富士を彷彿とさせる雰囲気がありました。
ただ実績はというと全日本やインカレといった主要タイトルは取れずどちらかというとあまり陽が当たらない存在でした。
同年代だと小柳(現 豊山)やトゥルボルド(現 水戸龍)の方が目立っていたイメージです。
当時から右四つの力強さと柔らかさは際立っていましたが、攻め込まれたときの淡白さがそれ以上に目立ちました。
特に右を封じられるとそれが顕著でした。
3年生の時の中村大輝(現 北勝富士)との相撲ではおっつけ一本であしらわれるように押し出されていたのを覚えています。
技術的な弱点が目立つ学生時代でしたが、それがあってもアマチュアトップクラスの力を誇ったのは彼の無限大の素質の裏返しと言えるでしょう。
プロに入ってからの躍進は、立ち合いの甘さや左が使えないといった課題に一つずつ向き合いクリアしていったからに他なりません。
さらに言えば、大関昇進を果たした現在も技術的にはまだ課題を残しています。
特に右の差し方については大いに改善の余地があります。
左まわしが取れないときに肘だけで差し込む癖があり、左から引っ張り込むうちに体勢が悪くなる場面が目につきます。
大関ともなれば、よりこの弱点は執拗に突かれるでしょうから克服出来なければ大関の地位も覚束なくなるかもしれませんし逆に言えばそれを乗り越えた時に一つ上の番付に道が開くかもしれません。
貴景勝や御嶽海をはじめ、最近は押し相撲の力士の躍進が目立ちましたがやっと本格派四つ相撲の復権が朝乃山から始まる気がしています。
照ノ富士が幕内に戻って来るであろう来場所はさらなる波乱の予感もあり、益々大相撲から目が離せません。